fuchi's diary

都内在住のゲイの感じたこと、考えたこと

ゲイであることを受け入れた瞬間

僕がゲイである自分を受け入れることができたのは、働き過ぎて倒れたことが直接的なきっかけです。

 

僕は、同年代の同僚と比べると、仕事に生活の比重を置いて暮らしてきたように思う。

それは、仕事の内容が自分の能力や性格に合っていて楽しいからというポジティブな理由もあるけれど、自分がゲイなのか否かを考える余裕を生じさせないためでもあり、また、周囲からの「彼女を作らないのか」という質問に「仕事に集中したいから」と答えるためでもあった。

勘の鋭い上司から、「何をそんなに怯えているのか」というニュアンスのことを聞かれたことがある。

僕は、自分がゲイであると認めたら、周りにそのことがバレて、職場から去らざるを得ない状況が来るんじゃないかという恐怖を常に心のうちに抱いていた。この上司は、僕が隠そうとしても隠しきれずににじみ出たその感情に感づいていたのだろう。 

 

そんな中、今年の春、僕は大きなプロジェクトに途中参加することになった。

そのプロジェクトはすでに山場をむかえていて、参加直後から毎月100時間を超える残業の毎日で、帰って寝るだけ、場合によっては帰れない日すらある生活が続いた。

それまでは残業が多い月でも60時間程度だったから、今までに経験したことのない世界だった。それでもなんとかプロジェクトが完了するまでは、と気力を振り絞って働き続けた。

少し離れた場所にいる複数の同僚からは、そんな働き方をしたら身体を壊すから気をつけてと心配の声が聞こえてきた。友人でもある同僚には「命を削って働いてる」とまで言われた。

そして、プロジェクトが無事に完了して一段落した頃、案の定、無茶な働き方をした反動で僕はダウンした。

 

ダウンした前後は、完全に抑うつの症状が出ていた。何を食べても味がしない食事、疲れているのに眠れない夜、仕事のない土日は何もできない状況だった。

もしあの時、心配してくれた友人に今にも倒れそうな自分の状況を打ち明けていなかったら…もしあの時、初めての心療内科に駆け込んでいなかったら…もしあの時、上司に心も身体も限界だと伝えていなかったら…そして、僕が頼りにした人達が、親身になって僕を助けてくれなかったとしたら。

何か一つでも歯車が噛み合わなかったら、最悪の事態を迎えていた可能性を否定できない。

 

スティーブ・ジョブズの有名な言葉に「もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは 本当に自分のやりたいことだろうか?」というものがある。

過労で倒れて、現実に起こりうる自分の死の可能性に直面したとき、僕がやり残していると感じたのが「男の人を好きになる自分を認めること」だった。

それまでずっと認めることができなかったけど、心も身体も疲れ切って何も考えられなくなったあの瞬間に、ストンと受け入れることができた。

ただ、ダウンした直後は、自分の性的指向にきちんと向き合うための体力も思考力も残ってなかったから、まずはボロボロになった心と身体を回復させることに専念した。

幸い、症状は長期化せずに体調が回復して仕事に戻ることができた。仕事も落ち着いて、自分を取り戻した生活ができるようになって、ようやくゲイブログを始められた。そこから先のことは、このブログに書いてきたつもりだ。

 

僕が働き過ぎで倒れたのは、圧倒されるほどの仕事量とか、大きなプロジェクトゆえのプレッシャーとかも大いに影響しているけど、自分を受け入れず、仕事に逃げ続けていたひずみが一気に噴出した出来事でもあるのだと、今はそういう風にとらえている。

 

今でも、職場でゲイだとバレたらどうしようという気持ちがあるにはある。だけど、それで仕事をやめざるを得なくなったらやめればいいか、と思ってる。

20代の頃、仕事と並行して、万が一に備えて資格の勉強をコツコツと続けて、ある資格を取得することができた。その資格があれば、今とは別のキャリアに進むことができる。僕は、今の仕事を大切にしたいと思っているけど、いざというときは、今の環境から飛び出せるチケットが手元にある。

その安心感が、僕がゲイとして生きることを後押ししてくれている。というより、この「人生の保険」とも言えるチケットを持っていなかったら、ブログを書くことも含めて、ゲイとして何かをすることは怖くてとてもできなかったと思う。僕はものすごく臆病なんだ。

そう考えると、働き過ぎで倒れるのは絶対に繰り返さないようにしたいけど、仕事と勉強ばかりしていた20代の時期も、ゲイであることを受け入れるために必要な期間だったのかな。

あまり器用とは言えない生き方をしてきたけど、あの瞬間を経た時から、やっと自分に素直になれたと思う。

 

fuchi00.hateblo.jp

fuchi00.hateblo.jp