fuchi's diary

都内在住のゲイの感じたこと、考えたこと

あれは初恋だったのか<下>

ようやくタイトルの問いにたどり着いた。僕の心は、あの日、T君の温もりを感じた時から、T君に猛烈に惹きつけられてやまなくなった。

T君に惹きつけられたあの感情が恋だったのかは、今も断言はできない。でも、きっと恋だったんだと思う。僕がT君に抱いた感情は、友情の延長にあるものとしてはあまりに鮮烈で、理性では逃れることが許されない性質のものだった。

僕は、10代の頃に同性の友達を好きになったことがあるけれど、10代の頃の「好き」は友情と恋愛の感情が未分離で、友達として好きだけどそれ以上に好きでもあり、恋愛対象として好きだけど友達としての好きと分けることができないものだった。

T君へ向けた感情は、僕が10代で経験した「好き」とは違って、T君のことを考えないようにしようとしても制御できない、常に喉元に突きつけられるような強烈な感情だった。そして、それは苦しいのに、苦しさ以上に僕の心を満たす何かも持っていた。

 

僕がT君にこのような感情を持ったことを、もしかしたらT君は気付いていたのかもしれないと思う。あの日曜日の翌日、実は、もう一度家に来てもらえないかとお願いするメッセージを僕はT君に送っていた。あの日、僕の性的指向に気づいた可能性が高い彼の対応があまりにも優しかったから、もしかしたら、彼もそうなのかもしれないという淡い期待があったからだ。

だけど、T君は僕が傷つかないような形で僕からの誘いをスルーしつつ、気遣う言葉をかけてくれた。その対応のおかげで、僕は頭を冷やすことができて、これ以上T君に頼ってばかりはよくないと、お詫びとお礼のメッセージを送って、友人としての関係を維持していこうと決意した。

ただ、友人でいようと決意したとは言っても、彼からLINEが来るたびに些細な内容でも心が軽やかになるし、彼の顔を見れば、それまで見ていた彼の顔の何倍もカッコよく見えるしで、結局、T君への一方的な想いが穏やかな友情へと解消するまでには、数ヶ月〜半年くらいの期間が必要だった。

今もT君とは友達で、連絡をよく取るけど、今はT君を前にしても、あの頃の強烈な感情が舞い戻ることはない。でも、あの日の出来事、そしてあの日から数ヶ月の間、T君に向けていた僕の感情は、これから僕が生きていく上でたびたび振り返る、貴重な経験になるのだと思う。

今はまだこの経験から汲み取れるものを言葉にすることがうまくできないけど、そう遠くないうちに、大切な示唆を与えてくれる時がくる、そんな予感がする。

 

終わり 

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